今、誰かと物を共有したり、貸し借りをし合うシェアリングサービスが注目されている。まちなかでも、自転車や傘などのシェアリングサービスをよく見かけるようになってきたが、そんな中でご紹介したいのが、車とベビーカーのシェアリングサービス。どんなサービスなのかを知るため、Community Mobility株式会社の大西和貴さんと株式会社ジェイアール東日本企画の森祐介さんに話を聞いた。
バスとタクシーの間? “ちょいのり”を実現する!
これまでにない新しい交通サービス
mobiは、Community Mobility株式会社が提供する、人とまちが繋がりコミュニティが生まれる「Community Mobility」をコンセプトに掲げるAIシェアリングモビリティサービス。半径約2kmのサービス提供エリア内が、定額で乗り放題となる交通サービスで、豊島区の大塚エリアをはじめ、全国の各地域で順次試験的に進められている。
mobiが他の交通サービスと異なるのは、時刻表や運行ルートが固定されておらず、スマホを使って乗りたい時に車を呼んでエリア内を自由に移動することができる、オンデマンド交通サービスである点。また、乗り込む場所と時間が近く、同じ方面へ行く予定の利用者がいれば、相乗りをして各自の目的地へ向かう相乗り型のサービスを基本としている。そして、サブスクリプションにより経済的なストレスなく、何度でも利用できる点が最大の特徴といえる。
ドライバーや同乗者との間に生まれるコミュニケーションも、
mobiならではの魅力
mobiは1エリアにつき、2~4台が運行しており、ドライバーもある程度固定されている。そのため、mobiがまちの見守り人としての役割を担っている部分もあるのだと大西さんは語る。
「相乗りをするので、ドライバーだけではなく、同乗した似たライフスタイルのお客様同士のコミュニケーションも生まれますし、mobiは人とひと、人とまちをつなぐ存在にもなりえるのではないでしょうか」
現在は子育て世帯の利用が多いが、サービス提供側としては、今後はあらゆる人に利用してほしいという想いもあるという。「免許を返納されたご高齢の方にも、移動手段として使っていただきたいなと考えています。今後は、地域の方へアプリの使い方も丁寧にご説明をさせていただきたいと考えております」
まちを活性化させる、新しいコミュニティ文化を創っていきたい
個人の移動をより便利にしてくれるmobiだが、人々が便利さを手に入れた先には、どんな未来が実現されるのだろうか。「移動が便利になれば、ライフスタイルが変わったり、外出の頻度やもっと遠方へ行きたいと考える人が増えるでしょう。こうした行動変容が起きたり移動総量が増えることで、人と人、人とモノ、人とコトがふれあう機会が増え、新しいコミュニティが生まれてまちの活性化につながります。我々は、それを実現したいんです」
子ども連れの救世主!
親子のお出かけをもっと便利にする子育てMaaS
べビカルは、東日本旅客鉄道株式会社と株式会社ジェイアール東日本企画が協働して展開する、予約ができる、外出先でのベビーカーレンタルサービスだ。
「会員登録をしてWEBサイトから予約をすれば、マチナカにある貸出拠点でベビーカーを借りることができる、お子さま連れでの外出時に便利なサービスです。現在、首都圏主要駅を中心に、北は札幌、西は湯布院までのエリアに展開し、今後もサービスの拡大を検討しています」
べビカルは、「持ち出し場所に制限がない」「事前予約ができる」「最大7日間利用できる」「気軽な料金体系で利用できる」という特徴がある。
「館内で利用できるベビーカーレンタルサービスはよくありますが、基本的に施設外には出られないという制約があります。どこに持ち出してもOKですし、事前に予約ができるので、安心して使っていただけると思います」
子育て夫婦のリアルな会話から生まれたアイデア
サービスが実現化したのは、JR東日本とグループ会社の社員が参加できる新規事業プログラムの公募に森さんが応募して採択されたことがきっかけなのだという。そもそも、アイデア自体は、どんなことから着想を得て生まれたのだろうか。
「実は、べビカルは妻のアイデアなんですよ。応募しようと思っていた、自分の企画案について妻に話をしたら、「それよりも、駅でのベビーカー利用で困っている人がたくさんいる。そういう困りごとを解決するための企画をJRでやるべきなのでは」と言われたんですよ。「ああ、そうか」って(笑)。それで翌日、そのアイデアを案として応募したら、通っちゃったんです」
べビカルは、まさに子どもが3人いるという森さん夫婦だからこそ生まれた、アイデアだったのだ。
サービスを通して、子どもともっと気軽にお出かけできる社会
実は池袋では、この便利なサービスを早速取り入れようと動き出し、2022年4月からべビカルの実証実験が行われている。べビカルは基本的に、借りた場所にベビーカーを返却しなければならないが、今回の豊島区の実証実験では、豊島区内の有人拠点であればどこでも返却可能という初の試みを取り入れている。
「利用された方からは、「どこでも借りられて返却できるのは便利」という声をいただきますね。こうした実証実験を含め、今後より多くの方にベビカルを子育てMaaSとして使っていただくことで、子どもともっと気軽にお出かけができる社会になっていくといいですし、べビカルに他のサービスを付加して、サービスにより広がりを持たせていければと思っています」
豊島区で増えているシェアリングサービス。シェアリングサービスによって移動が便利になり、誰もが自由にいろんな場所へ出かけられるようになる。シェアリングサービスは、そんな人とまちの明るい未来に一役買う価値あるサービスなのだ。