2017年にスタートした、池袋東口エリアを中心にリビングのように居心地の良いまちなかを目指す、“まちなかリビング”プロジェクト「IKEBUKURO LIVING LOOP(以下LIVING LOOP)」。その活動の一つであるマーケットの2023年開催日程が発表された。そこでLIVING LOOPがこれまで何を考え行ってきたか、改めて伝える機会として、企画運営メンバーによるトークイベントを実施。株式会社nestの飯石 藍さん、宮田 サラさん、株式会社サンシャインシティの倉林 真弓さん、株式会社良品計画の神代 悠夜さん、RACINES FARM TO PARKの柳岡 律子さんの計5名が登壇した。
東口を居心地の良いまちなかに。“まちなかリビング”プロジェクト
LIVING LOOPはグリーン大通りの賑わい創出を目的として、nestが豊島区から業務を受託し、2017年からスタートさせた。グリーン大通りと南池袋公園を舞台にまちなかの様々な使い方や過ごし方を実験し、少しずつリビングのような風景を育んできた。2020年からは、この動きを池袋全体に広げていくために、地元企業であるグリップセカンド、サンシャインシティ、良品計画、nestの4社でプロジェクトを進めている。今でこそ池袋のまちに浸透しているこのプロジェクトだが、ここに至るまでは試行錯誤の連続だったようだ。
かつて、LIVING LOOPの会場であるグリーン大通りは、居心地良く過ごす場所というより、目的地への通過点という印象が強かった。そんな通り過ぎるだけのグリーン大通りに新たな価値を持たせるために、まずは通りの近くにある南池袋公園での過ごし方、活用の仕方から見えてくる魅力・価値を滲み出していくことが大事だと考えたそう。
宮田さん「公園の日常の使い方、価値づくりとして最初に行ったのが、『nestマルシェ』。毎月土日の2日間、日中から夜まで開催していました。あとはRACINESさんに協力いただいて南池袋公園でアウトドアウエディングを行ったり、野外映画上映を行ったり。マルシェだけでなく他の活用の仕方を実験してみるうちに、公園の使い方が多様化してきました」
おしゃれな空間だけでなく、日常のひとコマがそこに
南池袋公園に人が集まるようになり、この公園のにぎわいをグリーン大通りに滲み出していきたいと思ったものの、公園と通りの印象のギャップから、なかなか人が集まらず、グリーン大通りで開催した初期のマーケットは出店者がゼロだったことも。そこで道路という空間を演出するために屋台を作ることにし、そこに地元の人たちにもワークショップで参加してもらったり、マーケットの運営に携わるボランティア(nest cast)を募ったりしたところ、出店者の他にも、LIVING LOOPに関わる人が集まり少しずつコミュニティが育っていった。これが『IKEBUKURO LIVING LOOP』の始まりである。そして“都市を市民のリビングへ”をテーマに掲げ、居心地のよい場所をまちの中に作っていくために、ストリートファニチャーの設置実験や、まちを回遊できるよう、お店を紹介するマップを作成。段々とグリーン大通りの賑わいにつながる取り組みが進んだ。始動して1年目は、「池袋にこんな場所があったんだ」という感想が多かったが、2年目、3年目となると「この光景も池袋だよね」という感想や、その声すらも上がらない、自然な風景としてまちに馴染んでいくようになった。
宮田さん「本当にリビングに近づいたなと感じていて。マーケット中、グリーン大通りに設置したファニチャーでクロスワードを解きながらビールを飲んでくつろぐおじさまの姿など、日常のひとコマがそこにあるということがすごくよかったなと、昨年のマーケットを振り返ると感じます」
このような日常的な使い方の実験やニーズの検証を繰り返し、ストリートファニチャーの常設設置や駅前広場化等に向けた可能性を模索している。
LIVING LOOPの価値は「ネイバーフッドコミュニティ」。ひとやまちと繋がっていく
LIVING LOOPがこれまでマーケットや社会実験、日常の営みを通して、まちに暮らす人たちとの関係性を育んで形成してきたこれまでの活動をひとことで表すと「ネイバーフッドコミュニティ」。LIVING LOOPを通して、ひとやまちとのつながりが広がっていることを実感している。
倉林さん「サンシャインシティは、2017年にいち出店者として参加してから企画運営に携わったこの6年間で、関わる人たちの属性が増えたと感じています。サンシャインシティとしても、LIVING LOOPに参画してくださるよう様々な地元企業に声がけもし、想いに共感した仲間の輪が広がっています。出店者やボランティアキャストに加え、企業までも、コミュニティが広がっているところがこの取り組みのいいところで、LIVING LOOPがある種のプラットフォームとして育っているなと感じます」
飯石さん「LIVING LOOPは、関わる人の属性の多様性が面白さだなと感じます。出店者はもちろん、企業の規模も業種も全然違うし、事業の大小ではなく、それぞれの役割を果たしながら、LIVING LOOPを取り巻く輪が広がってきている。それが他の大都市におけるまちづくりとは違う良さだと思います」
また日々の企業の活動を通じで地域とのつながりを感じるときがあるという。
柳岡さん「学生のアルバイトが多いこともあり、これまで学生が卒論や研究課題としてお店に話を聞きにくることもありました。こうした南池袋公園での成功例を、他の地域でも参考にしたり、将来につなげたり、お客さんやスタッフのきっかけになればいいかなと思います」
神代さん「地域の方と一緒に何かできる場を増やしたい、地域の人が自慢できるものを販売したいという想いがあります。今池袋という地域だけでも無印良品は4店舗あり、地域の皆さんの目的に合わせて、コミュニティセンターとして活用していき、地域の方とのアウトプットの場を増やしていきたいと思っています」
そして今回のトークイベントも継続的に行っていくそうだ。
飯石さん「これまでの6年間は、メディアで取り上げられることもありましたが、現場では試行錯誤の連続でした。チャレンジさせてくれる豊島区の器の大きさもあるし、わたしたちも、実際にやってみないとわからない中で、ひとつひとつ仮説を立てて実行し続けてきたことで、グリーン大通りの期待値を上げ、使い方を試し、LIVING LOOPというプロジェクト自体がたくさんの人の居場所になっていきているなと実感しています。空間的なアプローチだけでなく、ここで過ごしたい、このまちに暮らしたいと思える「文化」をどう作るかずっと追い続けてきた結果が現在です。その片鱗が少しでも伝われば嬉しいなと思っています」
文:長 紅奈見 写真:立花 智
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。
market開催日時:
<market>
5月6日(土)/7月1日(土)/9月2日(土)11:00~20:00
<special market>
11月3日(金)11:00~20:00
11月4日(土)11:00~20:00
11月5日(日)11:00~16:00
会場:・池袋東口グリーン大通り
・南池袋公園
・サンシャインシティ 等 ※Special Marketその他、周辺店舗・施設と連携