Mixalive TOKYO
2020年にオープンした、ライブエンターテインメントの複合施設「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」。まちのにぎわいに一役買う存在として舞台や音楽ライブ、トークショー、展示会、グッズショップ、コラボカフェなど多彩なジャンルのコンテンツを発信し続けている。運営の主体を担うのは、出版社として110年以上の歴史をもつ講談社。「エンタメ都市・池袋をさらに盛り上げたい!」と話す、ライツ・メディアビジネス本部 事業開発部でMixalive事業のチーフプロデューサーの浦田健一さんに、Mixalive TOKYOのこれまでの歩みと今後のビジョンについてお話をうかがった。
エンタメ企業が集結した新カルチャーの発信拠点
池袋駅東口から徒歩3分、サンシャイン60通り入口に位置する「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」。講談社とともに発信力のある企業が“パートナー”として手を取り合い、旬のコンテンツ開発に取り組んでいる。
「地下2階、地上9階までの建物に集合するのは4つのホールとグッズショップ、ライブカフェ。講談社が運営する『Hall Mixa』とキングレコード様が運営する『Club Mixa』が地下2階に、4階にはテレビ東京様の『Studio Mixa』とブシロード様の『Store Mixa』、6~8階までの3階分を抜いてあるのが、こちらも講談社が運営する『Theater Mixa』。9階には、講談社プロデュースでシダックス様が運営する『Live Cafe Mixa』。また、この施設で提供するLIVEエンターテインメントは、様々な企業とパートナーシップを結んでコンテンツ制作を行っています。関わっていただいている各企業が、得意分野を生かすことで、Mixaliveは成り立っています」
「Mixalive」とは、“ライブコンテンツをMIXする”という造語。まさに、多種多様なコンテンツがここに集結しているというわけだ。
「講談社ではこれまで漫画、小説、児童書、実用書、グラビア、ファッション分野などで、さまざまな作品や情報を発信しています。これらを“LIVEエンターテインメント”というカタチに変換し、池袋から日本全国へ、そして世界に発信していこうというのがこの事業です。そして、その拠点となるのがMixalive TOKYOです。池袋は『劇場の街』として注目を集めるエンタメ都市であり、サブカルチャーが集まる地域。そして、Mixalive TOKYOは駅からの人の動線上の入り口にあります。さらに、弊社のある護国寺からの距離も近く、会社にとっても身近なまち。池袋は、立地的にも環境的にも素晴らしい場所です」
「物語を生み出す創作現場」は元映画館!
新しい劇場であるにもかかわらず、Mixalive TOKYOには昔からずっと存在しているかのような周囲に溶け込む雰囲気がある。それもそのはず。Mixalive TOKYOは長きにわたり池袋のランドマーク的存在として親しまれてきた「シネマサンシャイン池袋」を丸ごとリノベーションした建物なのだ。映画館時代の設備環境を随所に残し、レトロな雰囲気が漂う空間も特徴のひとつとなっている。
「講談社が運営する多目的ホール『Hall Mixa』にも、シネマプロジェクターや座席などの映画館時代の機能を残しています。座席は劇場で一般的に使用されているものより座り心地が良く、リラックスできると好評です。スクリーンも映画館と同じ特殊なタイプを流用。映画館特有の雰囲気を感じることができますから、試写会や映画上映イベントの場としても利用いただけます。各座席にある収納テーブルはPCや資料を卓上に広げられるので、セミナーやメディア向けの記者会見、マーダーミステリーや謎解きのイベントなどにも便利な機能となっています」
Mixalive TOKYOと映画館。どちらも同じ“劇場”ではあるが、映画館には舞台やステージがなく、音響や照明の設備も異なる。建物の再利用とはいえ大規模な改修が必要となるため、苦労する部分も多かったという。
「映画館の場合はスクリーンを見るわけですが、われわれの施設でお客さまが見るのはステージ。視線が全く違います。座席の高さを変更して、どの客席からでもステージが見えるように工夫しました。そして、映画館にはない控室のスペースやキャスト導線をどうやってつくるかなど設計するときは悩みました。また、講談社にとって施設の管理やイベント運営も初めての事業になるため、運用するための体制づくりも大変でした。映画館時代のよさを残しながら新しいLIVEエンターテインメント事業を成立させ、施設としての魅力とコンテンツの魅力を両立させる。いろいろな観点から考えぬく必要がありましたが、思い返すとその過程を楽しめた気もします。シネコンをそのままコンプレックス型の劇場にしていくという発想は、おそらくMixalive TOKYOが初だったのではないでしょうか。ライブハウス、グッズショップ、コラボカフェなども複合的に備えたLIVEエンターテインメントを発信できるのは、この劇場の一番の強みだと思っています」
カルチャーの最先端をいく企業が集まり、最先端の技術を駆使して展開するMixalive TOKYO。
「技術パートナーであるソフトバンクにご協力いただき、2020年のオープン当時には画期的だった5G環境を配備し、VRカメラによる撮影や配信サービス、LIVEコンテンツのARを使ったサービスなども協業で展開してきました。また、講談社ではXRライブに対応できる設備も導入し、ハイブリッドシアターとして進化させる取り組みを行っています」
まちを通してエンタメの楽しさを広める場所でありたい
オープンから今年で4年目を迎えるMixalive TOKYO。講談社が連携するのは、パートナー企業だけではない。池袋というまちとの連携を積み重ねることで、開かれた劇場としてその存在意義を確実なものにしてきた。
「コンテンツをブランディング化し、施設として特別な存在になるというのは、事業を成り立たせる上では大切なこと。しかし、Mixalive TOKYOが成り立つのは池袋という恵まれた立地、環境があるからこそ。ですから、恩恵にあずかるばかりではなく、地域に貢献できる活動にも積極的に取り組んでいます。周辺の大型ビジョンを持つ施設と連携した合同広告の獲得や『GIGO総本店』と互いの大型ビジョンをシンクロさせてお互いの告知映像を放映するなどの活動を推進しています。また、2023年には豊島区の協力も得て『一般社団法人としまアートカルチャーまちづくり協議会』が主催する『池袋ミステリータウン』プロジェクトの立ち上げにも関わらせていただいており、さらには講談社のコンテンツである『金田一少年の事件簿』とのコラボレーションなども行って、ミステリー文化の聖地化に協力しています。今後も地域と一体で事業の発展を目指したいと思っています」
MIXするのは、ライブコンテンツだけではない。まちづくりに交じり、まちと頼り合える関係を築くこともMixalive TOKYOが施設事業として掲げるビジョン。
「施設事業は地域に根差し、地域に必要な存在となることも必要です。まちと連携することでまちのPRに協力することができますし、事業の新たな可能性を見出すことにもつながると思っています。アイデアや物語をカタチにする表現力が講談社の強みだと思っていますので、まちの頼れる存在としても成長していきたいですね」
文:濱岡操緒 写真:北浦汐見