よしもと放課後クラブ 東京校
今年5月、サンシャインシティ文化会館7階に吉本興業発の新しい施設が誕生した。その名も「よしもと放課後クラブ 東京校」。タレント養成スクールなどを運営する株式会社よしもとアカデミーが小中高生を対象に始めた、エンタメを通じて楽しく学べるアフタースクールだ。昨年10月にオープンした大阪に続き、東京と沖縄で同時開校。東京校には現在、「よしもとお笑いクラブ」と「K-POPダンスクラブ」の2つのクラブが設置されている。施設が生まれた背景や実際のクラブ活動の様子など、よしもとアカデミー代表の上田泰三さん、お笑いクラブ担当の長江康裕さん、K-POPダンスクラブ講師のA-NON(アノン)さんにお話を伺った。
とにかく楽しく遊んで学ぶ。放課後に始まるワクワクの時間
週に一度のレッスンが始まるのは、夕方18時。学校を終えた子どもたちが、サンシャインシティ文化会館7階に集まってくる。K-POPダンスクラブは毎週火曜日、よしもとお笑いクラブは毎週水曜日と決まっており、月額9,000円で最大で月4回のレッスンを受けることができる。
K-POPダンスクラブの講師を務めるのは、ダンサーのA-NONさん。吉本興業には芸人だけでなく、タレントやパフォーマー、文化人、アスリートなどが多数所属しており、A-NONさんもまたグループ会社運営のShowtitleに所属するダンサーだ。このクラブでは毎月、彼女がトレンドを踏まえて選定した課題曲にオリジナルの振りを付け、全4回のレッスンでマスターすることを目指すのだそう。
取材当日は、開校してからちょうど4回目のレッスン日。課題曲であるIVEの『Kitsch』を流しながら、振りの仕上げやフォーメーション移動の練習を繰り返し行っていた。
「今通ってくれている生徒の皆さんは、小学2年生から高校1年生と幅広いですね。まだ開校して間もないので人数も少なく、最初はガチガチに緊張していましたが、ストレッチや筋トレでの競争など、みんなで和気あいあいとできるものを取り入れつつ、ダンスの構成を繰り返し練習していくなかで、少しずつ仲良くなっているのを感じます。今日は仕上げの日だったので、ピンクと白の服で揃えつつ、マスクを取って踊ってみたら、みんな解放されたようにいきいきとしていてすごくよかったですね。初回からの成長を感じました」
なかには月の途中から参加したという生徒も。ワークショップイベントへの参加をきっかけに、この「K-POPダンスクラブ」に入る子どもたちも増えているという。
「先日出張授業として開催したワークショップでは、ゲストの金田さん(はんにゃ.)がBTSの『Dynamite』を踊ってくださいました。ダンサーだけだと真面目な雰囲気になりがちなところを、芸人さんが盛り上げてくださってより楽しみながら練習できるというのは、この『よしもと放課後クラブ』ならではの魅力だと思います」
一方「よしもとお笑いクラブ」では、月ごとにテーマを設定。初月である今回は「漫才」をテーマに、全4回のレッスンでネタを1本作ることを目標にやってきたのだそう。
「一番のコンセプトは、芸人さんと一緒に遊んで楽しんでもらうこと。本当にそれだけなんです」と語るのは、担当者の長江さん。NON STYLEの石田明さん監修のもと、週ごとに異なる芸人が講師を務める。前半はゲームコーナーで楽しみながら芸人と触れ合い、お笑いを身近に感じてもらいつつ、後半ではネタを作って実際にマイクの前で喋ってみるのだとか。
「たとえば、ジャングルポケットが講師だった時は、斉藤さん、太田さん、おたけさんがばらばらになって、それぞれ子どもたちと一緒にネタを考えて発表するという内容だったのですが、そんな機会ってなかなかないから見ている方もすごく面白いんです。ご本人たちも、自分にない発想を子どもたちが持っていて楽しかったと言ってくれて、芸人の皆さんにとってもいい刺激になっているのは嬉しいですね」
憧れの人気芸人と、アイデアを出し合ってネタを一緒につくる経験は、きっと子どもたちにとって忘れられない思い出になるだろう。
子どもたちの居場所をつくり、夢の実現を応援する
では、「よしもと放課後クラブ 東京校」がオープンすることになったきっかけは何だったのか。運営元であるよしもとアカデミー代表の上田さんに伺ってみた。
「もともと吉本興業には、お笑いをはじめとしたエンタメの世界に関心がある方たちが集う“居場所”のような役割があります。この『よしもと放課後クラブ』は、子どもたちが放課後の時間を安心して身を置ける居場所をつくるとともに、クラブ活動を通して見つけた夢の実現を応援したいという思いから設立されました。両親が共働きで帰りが遅かったり、学校でなかなか友達ができなかったりと、いろいろな子がいると思いますが、家や学校以外に居場所が一つあるだけで気持ちが違いますよね。ここで新しい仲間や将来の夢も見つかるかもしれない。今はまだやりたいことがわからなくても、『よしもと放課後クラブ』に行けば何か楽しいことがあるぞ、と思ってもらえるような場所にしていきたいと思っています」
今後は生徒の数や年齢層、希望などに応じて柔軟にクラス編成や活動内容を変えながら運営しつつ、お笑いクラブやK-POPダンスクラブ以外にも、クラブ活動の種類を増やしていく予定だそう。エンターテイメントの第一線で活躍する講師陣のラインアップも、引き続き注目したいポイントだ。
ゆくゆくは、池袋をエンタメの聖地に。
「個人的には、今まで池袋でお笑いというのはあまり馴染みがなかった」という上田さん。多様な人とエンタメが集まる池袋に拠点を構えたことを活かして、今後はまちでの取り組みも増やしていきたいという。
「吉本のタレントさんたちを始め、アカデミーの生徒さんや『よしもと放課後クラブ』で勉強した子どもたちが、まちのイベントスペースやステージでパフォーマンスを披露する機会をつくりたいですね。子どもたちにとっても、観ていただいたお客さんの拍手や声援が自信や成長、モチベーションに繋がるのではないかなと。そして彼らが将来、芸人やタレント、ダンサーとして世界的に活躍したときに、池袋が聖地のようになれば嬉しいですね。たとえば彼らが通っていた学校があるまちとして、池袋で凱旋公演をやるとか。いろいろな条件が上手く重なって、経済的にも文化的にもいい効果が生まれればいいなと思っています」
A-NONさんにも、池袋の印象やまちでやってみたいことを聞いてみると、意外なエピソードが。
「5年前、吉本坂46のデビューの時に(※A-NONさんは吉本坂46のメンバーでもある)、サンシャインシティの噴水広場でパフォーマンスさせていただいたことを、思い出しました(笑)。たくさんの方に見ていただけてすごく嬉しかったですし、『K-POPダンスクラブ』に通ってくれるみんなにも、ステージやイベントへの出演など、何か目標を作ってあげたいなと思います。K-POP、芸人さん、池袋の3つの掛け合わせは、日本で『よしもと放課後クラブ』だけだと思うので、だからこそできる面白いことをみんなで作り上げていきたい。池袋は海外の方も多いのでダンスを通じて繋がったり、子どもたちが中心になってまちを盛り上げたりする機会も持てたらいいなと考えています」
池袋にまた新たな風が吹き、お笑いやパフォーマンスの力でまちによりたくさんの笑顔が増えていくことだろう。今後まちとの化学変化でどんなことが起こるのか、今から楽しみだ。
文:むらやまあき 写真:長 紅奈見
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。