アニメイト池袋本店
2023年3月16日、創業40周年を記念してリニューアル&グランドオープンしたアニメイト池袋本店。言わずと知れたマンガ・アニメファンのための専門店ではあるが、池袋に新しい彩りを与えながら、カルチャーのパワーでまちににぎわいを創出してきた立役者でもある。今回はアニメイトで働いて約30年の小山幸男さんに、アニメイトが池袋に創業してから現在までの歴史や新・池袋本店のこと、これからの未来について語ってもらった。
アニメイト1号店が池袋にできた理由は、サンシャインがあったから
現在は全国に約120の店舗を持つアニメイトだが、その第一歩は1983年3月にオープンした「アニメイト池袋」から始まった。池袋を創業の地に選んだ理由は「サンシャインがあったから」だと言う小山さん。
「開業当時はラジオを聴くアニメファンも多かったので、声でお店の場所を伝えるのに、1番わかりやすい立地はどこだろうかと考えたそうです。そこで『サンシャインの前です』と言えたらすごく伝わりやすいとなり、1号店の場所を池袋に決めたと先輩方から聞いています。1号店はビルの1階のみの小さな店舗だったんですよ」
1990年代には数々のヒット作品が生み出され、世の中のマンガ・アニメ熱が上昇。もちろんアニメイトもその流れに乗り認知度が上昇。2000年には池袋店が牛乳パックのような形のビルまるまる一棟(現在のアニメイトアネックス)に移転して、“本店”という冠も付いた。また、いつの間にかアニメイトのまわりにグッズショップが集まっていたサンシャイン60の西側の通りが“乙女ロード”と呼ばれ始めたのもちょうどこの頃。
「池袋はサンシャインシティのように女性が楽しめる場所や、区の女性に優しいまちづくりもあり、女性と相性の良いまちなんだと思います。だからアニメイト池袋本店にいらっしゃるお客様も、約8割が女性という全国のアニメイトと比べてもユニークな店舗なんです」
そして2023年3月、リニューアル&グランドオープンする池袋本店は、単なるアニメショップではない場所にしたいと小山さん。
「リニューアル後の池袋本店は、地上9階・地下2階という世界最大規模のアニメショップになります。各フロアには物販だけでなく、カフェやシアター、イベントスペースもできるので、声優さんの握手会からライブや朗読劇などのステージまで、いつ訪れてもなにか楽しいことをやっているような場所にしていきます。またTCGのデュエルスペースもできるので、そこで遊び方の講習会もできたらと思っています。お客様の間口を広く、既存のマンガ・アニメファンだけでなく、これからファンとなる方々にもぜひ来てほしいです。きっと何かお気に入りが見つかるはずですから」
池袋のまちがマンガ・アニメを文化としてまちづくりに受け入れてくれた
ショップだけでなく、まちを巻き込んだイベントも手がけているアニメイト。たとえば2010年から行われている「アニメイトガールズフェスティバル」はアニメ、マンガ、声優、グッズ、乙女ゲーム、コスプレなどさまざまな要素を集約。小山さんが総合プロデューサーを務めたこともある。
またグループ会社がサンシャインシティと共催で企画・運営するコスプレイベント「acosta!」は、ファンを喜ばせるだけでなく、まちとマンガ・アニメをつなげる役割も果たしてきた。当初からまちなかで開催できるようになったのは、まちの方々がコスプレやマンガ・アニメを文化として受け入れてきたから。いまや全国で開催している「acosta!」発祥の池袋会場は参加者が1番多く、一日に3000人ほどが集まるというから驚きだ。
「文化によるまちづくりという区の方針もあり、まちなかでコスプレイベントができるように働きかけを行ってきました。コスチュームや小道具、エリアごとの写真撮影の可不可など細部にわたってルールを設定。そのルールを参加者にしっかり守ってもらうことで、まちの方々が『ちゃんとしてるね』と安心してくださったからと思います。その甲斐あって、池袋のまちではコスプレをしたまま入店できる飲食店やショップも増えました。多様性を受けいれるまちならではの様子がとてもうれしいですね」
インバウンドにも期待。池袋のまちににぎわいを生む存在になっていく
日本のみならず、海外のマンガ・アニメファンからも熱い眼差しを集めるアニメイト池袋本店。2023年1月にはアニメツーリズム協会が認定する「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」のひとつに選定され、今後はインバウンドの観光客をまちに呼び込む起爆剤にもなりそうだ。
「海外にもアニメイトがあるためか、日本を訪れたら行ってみたい場所に池袋本店を入れてくれている海外のアニメファンも多いように感じています。弊社としても海外市場には可能性を感じていて、今後ますます情報を発信し出店も検討してまいります」
マンガ・アニメ作品とファンをつなぐショップとして、豊島区と一緒にまちのにぎわいの創出にも取り組んできたアニメイト池袋本店。小山さんはまちの方々に「アニメイトが池袋にあって良かった」と思ってもらえるような存在でありたいと話す。
「アニメイトが世界中のマンガ・アニメファンにとって魅力的な場所であり続けることで、池袋に訪れるきっかけになることができます。マンガ・アニメ作品の魅力を発信して、まちににぎわいを創出することで、区民や豊島区に関わる方々にも喜んでいただけるような場所でありたいです。みなさんもぜひ遊びにきてくださいね」
文:井上 麻子 写真:鈴木 優太 / 長 紅奈見