近年、「池袋のまちがきれいになった」と感じている人も多いかもしれない。実は池袋の環境変化の背景には再開発だけではなく、ゴミ0活動をはじめとする、市民や企業によるまちをきれいにする活動がある。
『ゴミ0(ゼロ)』活動とは毎年5月30日前後に、美しく、安全・安心なまちづくりを目指し、区内の町会・商店会・学校・企業などが参加して区域全域で集中的な美化活動を行う豊島区主催の活動。これまで池袋西口中心で行っていたが、2022年の今年は池袋全域での実施となった。
この活動に参加している企業の方に、どんな想いで参加しているのかを聞いてみた。
CASE.1
セゾン自動車火災保険株式会社
経営企画部 佐々木さん
自動車保険をメインに損害保険事業を展開しているセゾン自動車火災保険株式会社。「安心安全をお届けする」という事業軸そのものがSDGsの貢献にもつながっている企業だ。
「2020 年のプラスチック袋有料化の際に、国際NGO組織のWWFさんから、社員有志でエコバッグを購入させていただいたのですが、社員の約3割が購入しました。日頃から、サステナビリティヘの意識は高い会社だと思います。2013年からは年に1回、ゴミ拾い活動もおこなっていますが、コロナ禍以前は人数制限が必要になるくらい、参加者が年々増えていました。」
SDGsにもつながる事業軸の下、ゴミ拾いの他にもフードバンクなどさまざまな取り組みを実施しており、社員一人ひとりの地域貢献意識も高い。
「安心安全をお届けする損害保険会社で働く社員として、お客さま、地域、そして地球に対して目を向けるという意識は統一されているのかなと思います。また、社内各部署にCSR推進者を配置し、環境問題について学ぶ研修などもおこなっているので、そういったことも各活動への意識づけに影響しているのかもしれませんね」
CASE.2
株式会社ナウイエンタープライズ
オペレーションデパートメント マネージャー青鹿さん
株式会社ナウイエンタープライズは、1960年にアメリカで誕生したスクーバダイビングの世界的な指導員組織である「NAUI」を日本で運営する法人企業。
NAUI は、「最愛の人を任せられる信頼」、「Dive Safety Through Education(教育を通じた安全なダイビングの実践)」を信条に、数多くの質の高いインストラクター、リーダーシップメンバーを育成し、安全・安心で楽しいダイビングの普及啓発に貢献し続けている。
これまでにもさまざまな環境保全活動に取り組んできた青鹿さん。2018年に株式会社サンシャインエンタプライズと共に任命された国際サンゴ礁年オフィシャルサポーターをきっかけに、2021年の5月からはサンシャイン水族館と合同で地域のクリーンアップ活動にも積極的に参加。その活動の延長線上にあったのが、今回のゴミ0活動だ。
「海をフィールドとしている会社なので、環境保全活動には積極的です。ダイビングの魅力は何と言っても綺麗な海。この先もきれいな海を見続けるためにも、一人ひとりが海を守っていかないといけないですよね」
海の関係者として、ゴミ拾い活動に対する想いも強い。
「海ゴミの約8割※1は陸から流れてきます。陸のゴミを拾うことが、海をはじめとする環境保全につながるんです。いろんな方にアクションを起こしてもらえるように、まずは弊社の社員が見本となって、ゴミ0のような活動に取り組んでいければと思います」
※1)出典:UNWorld Ocean Assessment(Allsopp,et al.,2006)
CASE.3
株式会社サンシャインエンタプライズ
飼育スタッフ 平井さん
平井さんの所属する株式会社サンシャインエンタプライズは、サンシャインシティ内でアミューズメントの領域を担当しており、具体的には水族館と展望台の運営などを行っている企業だ。
もともとサンシャインシティグループのゴミ拾い活動を行ってきたという平井さん。取り組み続けてきたゴミ拾い活動の中で、まちの変化についてこう語る。
「コロナ禍で中止されていたゴミ拾い活動が、サンシャインシティグループで再開されたんです。昔は大きなゴミ袋をひきずるほどゴミの量も多かったですが、活動の影響もあってかゴミが減り、まちがきれいになっているのを実感しています」
何か活動を持続するのにも気力は必要だ。ゴミ拾い活動を持続するモチベーションはどんなところにあるのだろうか。
「普段から水族館スタッフとして、人と海との関わりや命の大切さを伝えています。捨てられたゴミは雨などで海に流れてしまうので、私たちの生活は海の生き物の命に関わっているんですね。例えば、ウミガメがエサのクラゲと間違えてゴミ袋を食べてしま って死んでしまうということもあります。一人でも多くの人が環境を意識した行動をしたくなるようになり、こうした活動が広まればと思っています。」
CASE.4
一般社団法人Hareza池袋エリアマネジメント
遠藤さん
一般社団法人 Hareza 池袋エリアマネジメントは、Hareza Tower および東京建物Brillia HALLの開発事業者、建物所有者である東京建物株式会社と株式会社サンケイビルによって設立された組織だ。「誰もが主役になれる劇場都市」を実現すべく、Hareza 池袋及び周辺地域において、持続的に賑わいを創出する事業を行っている。
今回のゴミ拾い活動の他にも、月1回の清掃活動を行っているという同社。
「コロナ禍ということもありなかなか開催できていませんでしたが、2021年12月頃から、近隣関係者や劇場運営者と協力して清掃活動を行っています。Hareza池袋にはオフィスもある為、SDGs の観点からもこうした活動に積極的に参加して、発信していかないとという強い意志を持たれている方も多いです。」
ゴミ拾いだけではなく、今後も地域貢献を目指し、さまざまな取り組みを行っていきたいと意欲的だ。
「兼務している東京建物株式会社では古い建物も所有しているので、照明のLED化工事を中長期計画の中で進めています。今後は年に1回程度消費電力を減らす省エネデーを設けたりして、周囲に啓発を行いながらSDGsへの取り組みをエリアに波及させていきたいですね」
池袋のまち並みが変わってきた背景には、「まちをきれいにして地球を守り、地域に貢献していきたい」という人々の熱い想いがあった。この想いがより多くの人へと伝わり、今後、池袋がさらにきれいなまちの風景を見せてくれる未来が今からとても楽しみだ。