このエリアは、わが子のような存在。だからこそ全力で大切に育てていきたい
2020年7月にグランドオープンした「Hareza池袋」。旧庁舎と豊島公会堂の跡地を利用した再開発エリアに位置し、地上33階建てのオフィス棟「Hareza Tower」、ライブ劇場・多目的ホールを備える「東京建物 Brillia HALL」、「としま区民センター」の3棟と、中池袋公園から成る大規模複合施設だ。豊島区が掲げる「国際アート・カルチャー都市構想」のコンセプトである「まち全体が舞台の誰もが主役になれる劇場都市」を実現し、日本を代表する新たな文化発信拠点として多種多様なカルチャーを発信、日々にぎわいを見せている。開発・運営事業者である東京建物株式会社の遠藤祐也さんに、Hareza池袋のこれまでとこれから、まちづくりを担う役割について伺った。
Hareza池袋が新たな賑わいの拠点に
創業から100年以上にわたり、まちづくりを通じて社会課題の解決に取り組んできた東京建物。Hareza池袋は、どのような経緯で開発に至ったのだろうか。
「弊社が過去に豊島区の新庁舎整備事業を手掛けたこともあり、本エリアのプロポーザルにサンケイビルとともに参画。2015年にオフィス、劇場、店舗等で構成した大規模複合施設を提案し、開発事業者として選定されました」
歌舞伎などの伝統芸能や大型商業演劇、ミュージカル、コンサートなどのカルチャーを楽しむ8つの劇場を備え、豊島区の「国際アート・カルチャー都市構想」のシンボルプロジェクトという位置付けにあるのがHareza池袋だ。
「グランドオープン前の2018年に本エリアの価値向上を担う「『一般社団法人Hareza池袋エリアマネジメント』という組織を立ち上げ、竣工後の2021年には8つの劇場の運営者、地域関係者と連携した『Hareza池袋エリアマネジメント協議会』を発足。関係者一同でHareza池袋および周辺地域の魅力向上に寄与する活動を行っています」
「Hareza池袋のエリアマネジメントは、『にぎわいの創出』、『地域環境・防災性向上』『池袋エリア全体連携』『情報発信』という4つの柱を軸に活動しています。具体的に『池袋エリア全体連携』分野でいうと、たとえばサンシャインシティさんとの連携で池袋の各エリアで取り組んだ『IKEBUKURO HANA CIRCLE PROJECT』という花と緑をテーマにしたイベントや、毛糸を使って池袋内の公園の樹木や建築物を編みくるむ『としま編んでつなぐまちアート』などがあります。としま編んでつなぐまちアートでは一般社団法人Hareza池袋エリアマネジメントが指定管理を受託している中池袋公園でも行いましたが、樹木が少ないので石のベンチやふくろう像を毛糸でくるんだんですよ。また、池袋を代表する4つの公園(南池袋公園、池袋西口公園、としまみどりの防災公園)との連携をすべく定例会議をスタートさせ、同日開催のイベント実施等の検討に動き出したところでもあります」
Hareza池袋を起点としたまちを盛り上げる取り組みは実に多種多様! 2023年7月で3周年を迎えたが、オープン当初は集客に苦労した部分も大きかったという。
「コロナ禍でのグランドオープンだったため、社会情勢上われわれも集客につながるプロモーションを十分に行えませんでしたし、メディアに多く取り上げられる程の話題にならなかったということが最初に立ちはだかった課題でした。にぎわい創出に取り組むなかで考えたのが、Hareza池袋の前庭空間でもある中池袋公園の活用促進。さまざまなイベントに対応できるオープンスペースとしてリニューアルしたため、遊具はなくベンチは少ない。一部の区民の方からは休む場所が少ない点を指摘されていたんです。このように目的なしに来る公園ではないからこそ、コロナが明けた暁には『中池袋公園に行けば、いつも何かやってるね』と思ってもらいたい。いまでは中池袋公園は多種多様な文化の発信地となっています。また、池袋駅とサンシャインシティ、Hareza池袋が三角形を描く立地にあるので、まちの回遊性を向上させることにも貢献できていると感じています」
遠藤さんにとって、一つひとつのイベントに思い入れがあるそうだが、最も印象深いのはHareza池袋3周年イベント「Harezaの日3rd Anniversary SUMMER FESTIVAL 2023」。
「2023年、ようやく大々的に集客できるイベントが行えるようになって開催したのが『Harezaの日3rd Anniversary SUMMER FESTIVAL 2023』。周年イベントということもあり、1番力も入りましたし、やりがいを感じましたね。“Hareza=8(ハ)0(レ)3(ザ)”で、8月3日をHarezaの日にしているんですが、高際みゆき豊島区長やゲストアーティストのオーイシマサヨシさんと共にオープニングイベントとして行った打ち水イベントや周辺施設との連携企画に加え、音楽とアニメを融合させた“アニソンダンス”・”アニソンDJ”・”アニソンライブ”の様々なステージコンテンツを展開。8月4日にはテレビ番組の生中継が入るなど、今までにない賑わいを創り上げることができたのではないかと思っています。来年度以降のHarezaの日も、ぜひたくさんのお客さまに足を運んでいただきたいですね」
「まちを良くしたい」という100%の思いを届けたい
笑顔で話す遠藤さんから感じる、池袋に対する並々ならぬ思い。ここまで一つひとつの仕事に愛情を注ぐ理由は何なのだろうか。
「Hareza池袋の管理運営の担当として着任したのが、2020年。立ち上げ時期からずっと成長を見守ってきたので、わが子のように感じるんです(笑)。Hareza池袋が1番良いエリアだと思うし、Hareza池袋を1番知っているのは自分です!」
出身こそ違うものの、池袋は学生のころからなじみの深いまちだったという遠藤さん。しかし、以前は“危ないまち”というネガティブなイメージが強かったという。
「故高野区長のまちづくりに対する熱い思いが先導したからこそ、今の池袋があると思うんです。たとえば池袋の東西を結ぶ『ウイロード』。以前はダークな印象でしたが、美術作家によるアートで明るく、安心して歩ける場所になりました。また、池袋を代表する公園をリニューアルし、見違えるほど美しい公園に生まれ変わりました。まちづくりの構想を豊島区がリードしてきたからこそ、われわれも付いていくことができました。今の池袋は、私にとって自慢のまち。池袋は三大副都心として今までもにぎわいのあるまちでしたが、目的をもって訪れる人は意外と少なかったのではないでしょうか。でも、きれいな公園があって区の施設がリニューアルされ、さまざまなコンテンツが楽しめるHareza池袋という場所もできた。“目的になる場所”になってきたと思いますし、まち全体のマイナスなイメージがどんどん解消されてきています。それに付随して豊島区の政策も進められ住みたいまち、子育てしやすいまちとしても評価が上がってきているのだと思います」
故高野区長の思いを官民連携で切り開いていきたい
Hareza池袋に関わる以前は、賃貸マンションやオフィスビルの取得、ビルのバリューアップなど、大規模物件の管理運営とは違った業務に携わっていた遠藤さん。
「Hareza池袋での業務は、これまでとは全くの畑違い。でも、イベントの知識が増えましたし、一緒に仕事をする方々が増えたのは大きな収穫でした。実は、もともとアニメが大好きで近くには『アニメイト池袋本店』もあるので、いいとこどりの仕事でもあるんです(笑)。大好きなまち、大好きな仕事ですし、『まち全体を舞台に』という故高野区長の夢を実現できるよう、頑張っていきたいと思っています。昨年、豊島区が区制施行90周年を迎え、その際に立ち上がったのが『企業実行委員会』。豊島区に位置する企業や、豊島区に関わる企業が参画し、豊島区の未来をより良くしていこうという組織です。また、新たに企業実行員会の継続組織『チームとしま』という組織も立ち上がり、その一員として、100周年に向け、官民連携でこれからの豊島区のために活動しています。組織化することで、圧倒的な一体感、連帯感が生まれましたし、引き続きみんなでまち全体を盛り上げていきたいと思います!」
最後に、遠藤さん自慢の池袋で1番のお気に入りの場所を伺うと……。
「『洋食 UCHOUTEN』のハンバーグが大好きなんです! 池袋はハンバーグのおいしいお店が多いんですが、その中でも一番好きで、よく通っています。肉々しくもジューシーなハンバーグ、メンチカツなど、リーズナブルなのに味のクオリティが高い。カニクリームコロッケも売り切れ必至の人気メニューです。ぜひ一度、味わってみてください」
文:濱岡 操緒 写真:北浦汐見
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