豊島区をマンガ・アニメの聖地に! 豊島区のまちとアニメイトを繋ぐアイデアマン。
いまや全国的にマンガ・アニメのまちとして知られる池袋。その流れに大きく関わってきた存在の一つが、アニメイト池袋本店だ。今回はそんなアニメイトの役員で、豊島区とのさまざまな取り組みを行ってきた小山幸男さんが登場。いよいよ2023年3月16日に迫るアニメイト池袋本店グランドオープンにも携わっている小山さん。彼とアニメイトとの出会いから、小山さんが見てきたマンガ・アニメ文化と豊島区の歴史まで、いろいろと聞かせてもらった。
自らもコスプレで参加! まちとマンガ・アニメファンを繋いだイベント
池袋はアニメイト生誕の地。サンシャインシティの目の前に「アニメイト池袋店」として1号店ができたのは、1983年3月のことだった。時は流れて40年後の今日、池袋のまちには「乙女ロード」なるものが出現し、特に女性のマンガ・アニメファンが集うまちとして注目を集めている。てっきりアニメイトの作戦だったのかと思いきや、「違うんですよ」と、小山さん。
「たまたまなんです。もともと池袋やサンシャインシティに女性のお客様が多かったからなのか、いつの間にかアニメイトにも女性客が集まるようになりました。そこからアニメイトの周りにアニメイトのお客様に向けたマンガ・アニメ関連のお店が増えていき、2000年代に入ってからはサンシャインシティの西側の通りが、“乙女ロード”と呼ばれ始めたように記憶しています。うちがあえて女性向けのコンテンツに力を入れていたとかではなく、まちとマッチしたんでしょうね」
2012年にアニメイト池袋本店が現在の場所に移転した頃から、豊島区池袋を「マンガ・アニメのまち」として育てようという動きが高まり、小山さんと豊島区とのやりとりも頻繁に。そこで小山さんは、まちでさまざまなイベントを仕掛けていくことにしたそう。
「2010年に初開催した『アニメイトガールズフェスティバル』という女性向けのイベントや、のちの『acosta!』や池ハロに繋がるコスプレイベントなど、街中にマンガ・アニメ文化を広げる動きをやっていきました。会場として公園を使わせてほしいと交渉したり、コスプレのまま飲食できるようご協力くださるお店を増やしたり。マンガ・アニメの世界は、当時はまだ、外から見ると異世界のように感じられる傾向があったので、まずは、体験して安心さを感じてもらうことが重要でした。イベントをやり続けることでまちの方々からご理解をいただき、受け入れていただけるようになったのではないかと思っています。当初は私も自らコスプレをして、身をもってまちの人に楽しさを伝えていました(笑)」
初来店の翌日に履歴書を持参。アニメイトで“面白いこと”を実践してきた
池袋のまちとマンガ・アニメファンを繋げてきた立役者でもある小山さん。彼とアニメイトの出会いは大学生の時だったそう。
「小さい時からテレビっ子で、アニメが大好きでした。大学生になって関東に出てきた時、サークルの先輩がアニメイトへ連れて行ってくれたんです。当時、故郷にはアニメイトのようなマンガ・アニメ専門店はなかったので、ときめいてしまって。募集しているかも確認せず、翌日に履歴書を持って行ったら採用されて、学生アルバイトとして働き出しました」
2年半アルバイトをして、新卒で入社。教員になる選択肢もあったが、「面白そうな方を選んだ」と、小山さん。ちなみに入社年は新世紀エヴァンゲリオンのテレビアニメ版が始まった1995年だった。とにかくやりたいことをどんどん実践していったという小山さんは、かなりのアイデアマンだったようだ。
「最初は新店の立ち上げや店長として数年勤務。店長業をやりながら、アニメイトポイントシステムを作ったり、全店フェアをまとめたり、やりたいと思ったことはなんでもやっていましたね。異動した販促部でもとにかく面白いと思ったことを実践。たとえば、当時お客様にお渡しする購入者特典のほとんどはブロマイドやポスターでしたが、社内で初めて有償特典を企画してフィギュアを制作したり、作品の雰囲気に合わせたアタッシュケースや作品に登場するぬいぐるみを作ったりしました。ある時は主人公キャラが好きなチョココロネを商品の発売日当日限定で購入者に配ったり。さらにその後に企画宣伝部を立ち上げて取り組みを続けたり。意表を突かれたお客様の笑顔が見るのが楽しくて、良い思い出ですね(笑)」
ちなみに小山さんの好きなアニメを聞いてみると、さすがアニメファンな答えが返ってきた。
「古い人間なので、『銀河英雄伝説』が好きですね。私が大学生の時のアニメで、原作は田中芳樹先生によるSF小説。かなり長いシリーズで、当時は毎週VHSパッケージがリリースされるくらい人気でした。登場人物が多くて、大御所の声優さんが勢揃いしている豪華なアニメだったんですよ。あと料理が好きなので、食系の漫画。『クッキングパパ』は全巻持っています(笑)」
池袋は“敷居の低いまち”でいてほしい
日本酒が大好きな小山さんの池袋でのお気に入りスポットは、東池袋の「ずぼら」という居酒屋さん。
「いろんな人と飲みに行って話すのが好きなんです。『ずぼら』は池袋ではよくいくお店で、気軽に飲んでしゃべって楽しめるところが好きですね。人気店なので入れないことも多いのですが。池袋や大塚には美味しいお店もわりと多いので、もっと開拓したいです」
アニメイト創業の地であり、マンガ・アニメ文化の聖地にもなりつつある池袋。小山さんがこのまちに望むことはなんだろうか。
「学生の頃に一度池袋に来たことがあるのですが、当時から比べると現在はまったく別のまちになっていて、みなさんが安心安全な良いまちづくりに取り組まれているのを感じます。池袋は“敷居の低いまち”でいてほしいです。何かしたいとか、買いたいとか、遊びたいと思った時にてくてく歩いて、誰でも目的のものが見つかるまち。アニメイト池袋本店はそのなかで、マンガ・アニメの世界を知るための間口の広い場所でありたいです。また『アニメイトが池袋にあって良かった』と思っていただけるような、このまちににぎわいを生む存在であり続けるよう、これからも盛り上げていきたいですね」
3月16日のオープン後は販売だけでなく、イベントやライブが開催されるシアターも併設されるということで、ますます楽しみが広がる「アニメイト池袋本店」。お気に入りのマンガ・アニメを探しに行ってみてはいかがだろうか。
文:井上 麻子 写真:長 紅奈見
※掲載されている一部の画像については、取材先よりご提供いただいております。