池袋氷川神社
日本の山といえば富士山。実は池袋にも“富士山”があるのはご存知だろうか? 正確には「富士塚」と呼ばれるもので、さまざまな理由から富士登山ができない人たちも、これに登れば富士山に登ったのと同じ霊験が得られるとして、江戸時代後期以降、江戸を中心に築造された。そんな池袋の富士塚に登拝できる年に一度の行事が、池袋氷川神社で7月1日に行われる「お山開き」である。
池袋の人々を守ってきた「池袋氷川神社」
池袋の富士塚は「池袋氷川神社」の境内にある。
池袋氷川神社とは、建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)を主神としておまつりし、古い時代から今日にいたるまで、池袋村の鎮守、氏神さまとしてこの池袋の土地に住む代々の人々の守り神として崇敬され、親しまれてきた場所。
境内にある石牌によると、池袋氷川神社は、埼玉県大宮市にある氷川神社から分かれた神社とも言われている。
「池袋」という名については、室町時代永禄2年(1559年)の『小田原衆所領役帳』に「武州豊島郡池袋村」と書かれており、豊島区内の長崎、管面(巣鴨)、駒込、雑司ヶ谷、高田とともにすでに村が形成され、呼ばれていたことがうかがえる記録も。
また神社の創建は、天保元年(1830年)の『新編武蔵風土記稿』の池袋村の条に、「氷川社 村ノ鎮守」の記述があることから、この時期以前であるとみられており、東京大空襲によって焼失。現在の社殿は昭和40年(1965年)に修復竣工されたもので、今日まで池袋のまちの人々を守ってきた。
年に一度富士塚に登拝できる日、「お山開き」
池袋富士塚は明治45年(1912年)6月に池袋月三十七夜元講(つきさんじゅうしちやもとこう)によって築かれ、高さは約5m、東西幅約13m、南北幅約18mで、全山がボク石で覆われている。豊島区に残された数少ない富士塚のひとつであること、池袋本町地区に展開した民間信仰を考えていくうえで貴重なことから、平成10年(1998年)6月に東京都豊島区指定史跡となった。
富士塚に登拝できるのは毎年7月1日に開山を行うこの1日だけ。年に一度の特別な日に毎年多くの方が神社に訪れ、とても賑わう日なのだ。
また今年から、7月の第1日曜日(2023年は7月2日)も開山することになったという。2日続けてのお山開きであることに加え、2年にかけておこなわれた修復事業の完成記念でもあるため、これまで以上に特別な2日間の神事になりそうだ。
まだまだある、初夏の空気を感じられる行事
氷川神社では、お山開きだけでなく1年を通して様々な行事が行われており、近い時期には「夏越の大祓(なごしのおおはらい)」がある。
夏越の大祓とは、半年間の罪や穢れなどをはらって無病息災を祈る神事であり、毎年6月に実施。ちなみに夏越の大祓に対して、年末に行うものは「年越の大祓(としごえのおおはらい)」と呼ばれるそうだ。
年2回の大祓の時期には、境内に茅の輪(ちのわ)が設置され、これをくぐると厄難を免れるとされている。
この茅の輪くぐりは日本神話に由来。その昔、素蓋鳴尊様(すさのをのみこと)が貧しい一軒の家で一夜の温かい待遇を受けたことを大変感謝し、「もし世の中に悪疫が流行りだしたらチカヤをもって輪を作り、腰の上にかければ必ず一切の悪疫から免れる事が出来る」と教えた、備後国の蘇民将来(そみんしょうらい)との逸話が起源だそうだ。
2023年、池袋氷川神社では6月20日(火)から30日(金)まで茅の輪が設置されるため、期間中に実際にくぐってみてはいかがだろうか。
そして6月30日(金)午後2時より、夏越の大祓式として境内にて執り行われ、こちらは例年80名から100名ほどが参加する一大神事だ。
また、夏越の大祓とお山開きの2日間には、境内で地元民による朝顔市も開催される。
半年の疲れが溜まり始めるこの夏の時期に、ぜひ池袋氷川神社に足を運んで神事を体感してみてほしい。
文:としまハウス編集部
※掲載写真は取材先よりご提供いただいております。